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魔女の逆襲第10話 ◆oEsZ2QR/bg

りぃん

「風邪は大丈夫?」
「ええ。もうだいぶいいわ。一日寝てればすっかり治るものなのね」
「そっか。でもそういう気が抜けたときが一番危ないみたいだよ」
「そうみたいね。でも大丈夫よ」
 早百合の部屋に案内された良樹は、先ほどまでの騒動を気にしてないような口ぶりだった。
 まぁ、早百合としてもあんな醜態をいつまでも覚えておかれるとかなりダメージが溜まってくるため、そうしてくれることはありがたかった。
 早百合の自屋は綺麗に整頓されていて、早百合自身良樹を部屋に入れることはあまり抵抗無かった。部屋はテレビが無いだけで、普通の女の子の部屋となんら変わらない。そういえばこの部屋に良樹を入れたのは6年ぶりぐらいだ。
 良樹は床にあぐらをかいて座っていた。対する早百合はベッドに上半身を起こした状態だ。喉が痛いだけでほとんど抵抗無く動けるが、一応病人らしくしている。
「えっと…。これ、今日もらったプリントと……、貸すって言ってたCDな」
 鞄から良樹が取り出したのは、ボランティアの募集という別に持ってこなくても、早百合には関係なさそうなプリントと奥村愛子のアルバムCD。タイトルは万華鏡。
 昭和ノスタルジーごちゃまぜ妄想オシャレ歌謡という、一言では言いづらいジャンルで雰囲気的にはスカオーケストラのビッグバンドに大人の香りが漂う歌声の曲が主。たまたま良樹のMDプレイヤーで聴いてみて興味を持った歌手だった。
 プリントとCDを受け取ると、早百合はベッドの棚に置く。プリントはすぐに捨てるけど、今良樹の目の前で捨てちゃったらさすがに失礼に当たる。CDは後で聴こう。BGMとしては向かないだろうし。
「ありがと。明後日ぐらいに返すわ」 
「いや、べつにいいよ」
「そう? じゃあ、しばらく借りるわね」
「うん」
 一瞬、会話が途切れる。が、雰囲気を察してすぐに良樹が話題を切り出した。
「早百合、今日のことなんだけどさ…」
「へぇ、なに?」
「藤咲がさ」
「ねねこが?」
「……」
「…」
 ……。
 ……。
 会話が続いてゆく。
 良樹は今日学校であった珍事件(弁当の中身をぶちまけ事件ねねこ)を話すと、早百合もそれに続いてねねこの過去の事件(鰯の読み方をマグロと回答事件)を披露する。
 それに続いて話がどんどんと飛んでゆく、幼馴染の会話は三〇分ほど続いた。

 りぃんりぃん

 時刻も4時半を過ぎた頃。
「もう4時半か。あんまり長居しちゃ悪いから、僕はそろそろ帰るよ。」
 良樹が立ち上がる。
「え、もう帰るの? まだ居てよ」
 早百合の口から出たのは良樹を引きとめようとする言葉だった。早百合は自分で言ってすこし照れそうになる。このセリフは彼氏を自分の部屋に引きとめようとする恋人の言葉じゃないか。
 まるで早百合の心に直接口がくっついて喋ったように自然に出ていた。
「いやいや。お前は病人だろ? それにあんまり無理させると悪いからさ」
「え、ええ……」

りぃん

 目の前でコートを着込み帰る準備をはじめる良樹を見てると、早百合の体の奥から焦燥感と寂しさが襲ってきた。
不安が体中に悪性ウイルスのように広がり早百合の精神を締め付ける。
何故? どうして、良樹が帰ろうとすると自分はこんなに不安になるのだ?
 どうして、良樹にこんなに傍に居て欲しいのだ?
 どうして、どうして……。

りぃんりぃん

 どうして、こんなにも。こんなにも、こんなにもこんなにもこんなにもこんなにもこんなにも、
良樹を独占したいと思っているのだ?

りぃんりぃんりぃんりぃん

 頭の中で鈴が鳴る音がする。早百合に警告を与えるように鳴り響く鈴の音。

りぃんりぃんりぃんりぃん
 早百合は森の中に居た。
 じめじめと辺りは湿り、自然の思うがままに伸びた草や木々は怪物のように大きくうっそうと生い茂り、昼か夜かもわからずとても暗い。
 そこの大きな木の前に立つ早百合の耳元には、燕尾色の鈴が音を響かせていた。
 りぃんりぃんとなる鈴に呼応するかのように木々は蔦を生やしていき、それに増長されるように早百合の意識もどんどんあらぬ方向へと転がってゆく。
 そして、響く鈴の音。その音は早百合に存在する心を守る籠の鉄柵の隙間を縫うように侵入すると、内側から早百合の精神を追い立てた。

りぃんりぃんりぃんりぃん
 
 ひとつなるごとに、早百合の心には焦燥感が。
 ふたつなるごとに、早百合の心には束縛欲が。
 みっつなるごとに、早百合の心には独占欲が。
 そしてそこから生まれるたのは、紛れも無い、黒くて暗くて不気味で無様で険悪で邪険で醜い醜い…しかし見るモノから見ればとてつもなく純粋な

 良樹を掌握した、あの魔女への強烈な嫉妬心だった。

りぃんりぃん。

 そうか。ようやくわかった。
 この正体が。いままでずっと胸を締め付けていた原因が。

 私は魔女に、紅行院しずるに嫉妬しているのだ。

 りぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃん
 りりりりぃりりりりぃりりりりりりぃりりりりいん!

「早百合? 早百合? 早百合!」
 誰かに肩を掴まれている。
 早百合が気が付くと、目の前に良樹の顔があった。良樹は早百合の名前を何度も呼びかけていた。
「あ、あれ……?」
 その声に早百合はようやく混濁した意識をとりもどす。 …自分はどうしたんだ?
 きょろきょろとあたりを確認すると、紛れも無く自分の部屋。
 つい今まで、どこか知らない森の中を走っていたような気がしていた。
 早百合は思う。ここ最近は気のせいじゃなく、確実に意識が飛んでいる。しかも今回はかなり重症だ。
「どうしたんだ。早百合。いきなり虚ろな目でぼーっとして……」
 ただ普通にボーッとするぐらいなら、良樹もこんなに取り乱さないだろう。こんなにも良樹が慌てているということは、自分はどのくらい意識を飛ばしてたんだ?
「い、いや。大丈夫。うん、大丈夫よ……」
「やっぱり風邪酷いんじゃないの? 薬、下から持ってこようか?」
「大丈夫って言ってるでしょ!」
 思わず早百合は大声を出した。良樹の瞳が一瞬大きくなり、不安そうにゆがむ。その顔を見ると早百合はいたたまれない気持ちになり、思わず顔をそらす。
「大丈夫…。大丈夫だから……」
 本当は良樹に心配して欲しい。
 そんな本心は悟られないように早百合はうわごとのように大丈夫……と呟いていた。

 りぃん

「そう…。じゃあ、僕。帰るよ…」
 良樹は眉をひそめ、掴んでいた早百合の肩を離すとコートのボタンを上まで締めて立ち上がる。なんとなく。肩が下がってるように見えた。
「玄関まで送るわ」
「いや、いいよ」
「送るわ」
「いや……」
「送るのっ!」
 有無を言わさない早百合の言葉。
結局二人は無言のまま部屋を出ると階段を下り、玄関へ。
玄関に座り良樹がシューズを履く様子を、早百合はじっと見ていた。見られている良樹はなんとなくやりづらそうで思わず靴紐を縦結びしてまう。
「じゃぁ……、お大事に」
「待って」
 ドアノブに手をかけようとした良樹を早百合は制止する。
 先ほどまでの早百合の態度から、良樹は早百合の行動に敏感になっていた。そのままドアノブに手をかけようとした姿のまま言葉通り静止してしまう。
「そこで待ってて」
 早百合は良樹を待たせたまま、風呂場へ歩く。
 そこで放置されていた黒い布を掴むと、すぐに良樹の居る玄関へ戻ってきた。
 良樹は素直なのか早百合の態度にビビってるのか、そのままの状態で待っていた。幼少期は早百合のほうが普段の立場は上だったので、その時の名残が出てるのかもしれない。
 そんな良樹に早百合は丸まった黒い布を押し当てた。
「持ってって」
「なにこれ?」
「ブルマ」
 良樹は黒い布を受け取ると、パサリと両手で広げる。
 そこに広がったのは、ポリエステル100%で女の子の下半身を包む体操服、紺のブルマだった。
 ご丁寧に、洗濯されていない使用済みタイプで足を通す部分にシワが残ってるところがポイントである。
 良樹の顔が赤く染まる。早百合はその様子を無表情で見ながらを一言
「あげる」
「いらないよ!!」
 良樹は真っ赤になって叫んだ。
「なに考えてんだよ! なにいきなりブルマ渡すんだよ!」
「いらないの?」
「いらないって!」
「しずるさんのだけど」
「えっ…?」
 りぃん
 一瞬、良樹が詰まった。そこを見逃さない早百合は裸足のまま玄関口へ歩くと、良樹に問い詰めるように顔を近づける。無表情。
「欲しくなった?」
「ち…ちがうよ!」
「欲しいとか思わなかったの?」
「思ってないよ!」
「しずるさんのだよ? あなたの綺麗な恋人の……」
「だから思ってないって!」
「しずるさんのって言った途端、目が泳いだじゃない。欲しくなったんでしょ?」
「それは……、なんで早百合が持ってるのかわかんなかっただけで……」
 もっともらしい言い訳をするが、さらに早百合は詰め寄る。
「耳も真っ赤になった」
「違う」
「ブルマを持つ手も柔らかくなった」
「違うっ」
「やっぱり欲しかったんだ?」
「ちがうっ!」
「正直に言って。欲しかったんでしょ?」
「……」
「どうなの?」
「……そ…そりゃぁ……ちょっとは…欲しいかもって思ったけど」
「やっぱりそう思ったんだ」
「……う…ま……まぁね……」
「あたしのはいらないって言ったのに、あんな魔女のブルマは欲しいんだ?」
「そ…それは、早百合が詰め寄るから!」
 正論で返そうとする良樹だが、今の早百合は正論が通じる相手ではなかった。
 自分の感情だけで動く人間に言葉は無意味である。
「帰って。いますぐそれを持って消えて」
「さゆり…」
「早く!!」
 早百合の恫喝に、良樹は何か言おうとして……すぐに無駄だと悟り、ブルマをコートのポケットに入れた。そして敵意の篭った視線で見つめる早百合に「ごめん」と一言だけ呟くと、玄関のドアを開けて出て行った。
「………」
 玄関には早百合のくぐもったような息だけがこだましていた。

 りりぃん

「ここだな。鞠田早百合のホゥムは…」
数時間後。早百合の家の前には籠にめいっぱいフルーツを入れた魔女の姿があった。

(続く)
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