FC2ブログ

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://debumoja.blog90.fc2.com/tb.php/15-f812bf6b

-件のトラックバック

-件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

魔女の逆襲第12話 ◆oEsZ2QR/bg

 りぃん。

 玄関のドアが閉まる。
 良樹の姿が消えた。
 早百合はじっと閉じられたドアを見つめていた。
 早百合の頭には良樹に対する嫌悪感が風船のようにぎゅうぎゅうと詰められていた。
 数秒後。
 早百合は突然頭を抱えてうずくまった。
 般若の形相をした早百合は、玄関マットに猫のようにぎゅうぎゅうと頭を押し付けた。
ぎしりぎしりと軋む玄関の床。
 玄関のドアを背に早百合は頭を掻き毟っていた。整えられていない寝癖のついた髪の毛がさらにぐしゃぐしゃに方向を変え、数本がぶちぶちと抜け早百合の足元へ落ちてゆく。
「ぎぃぎぃぎぃぎぃ!」
 自分の衝動を押さえつけようとして顎から響く歯軋りが奏でる不協和音。
「ぐっぐっぐっぐっ!」
感情をぶつけるように壁を叩き。赤く染まる拳。どくどくと噴出す血液。赤く染まる玄関マット。まるで負傷した兵隊の包帯のよう。
そこに早百合の口から呪詛のように響き始める声。
「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い良樹なんか嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いきらいきらいきらいきらきらいきらいききききききいきらききらいききらききききききききぃききききききぃきぃきききき……」
 早百合にはこんなにも誰かを蔑む言葉を繰り返したことはいまだかつて無かった。あまりにも繰り返しすぎて感情に口がついていけず、最後にはきききききききききききききききききと嫌いの頭文字だけ、玄関中に連呼している。
 彼女は足元にあった携帯電話をぎゅうと握った。コバルトブルーの携帯電話が何かに浸けたみたいに赤黒く染まってゆく。
彼女が嫌いという度に携帯電話に付けられた燕尾色の鈴がりぃんと音を鳴らしている。
 早百合の部屋にあるはずの携帯電話が何故、玄関の床にあるのか? 今の彼女にはそれを思考できる余裕が無かった。
 
もし、この時点で。彼女が真相に気付き、この鈴をこの場で処分すれば最悪の事態は免れていたのかもしれない。

 彼女の心は何かに操られ、心にぼこりぼこりと溢れるて占める嫉妬のことしか考えられなくなっていた。
 鈴の音は脳髄の奥の奥まで響かせるようにりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃん。
 揺れる鈴。
 そしてそれを虚ろな目で眺める早百合。
 りぃんりぃん。
 待て。何故こんなに良樹が嫌いなのだ?
 良樹を独占したい自分は、何故良樹が嫌いといえるのだ?
 早百合は自分に問う。興奮したままの頭の中の狂ったコンピュタは回答はすぐにはじき出した。

りぃんりぃん

魔女!

りぃんりぃん

紅行院しずる!!

りぃんりぃん

あのからすおんな!!!

りぃんりぃん

 あいつがあいつがあの女があの魔女があの鴉女が良樹のそばに居るのが嫌い!
 良樹が魔女を見ると嫌い
良樹が魔女と一緒にいると嫌い。
良樹が魔女の手をつなぐと嫌い。
 良樹が魔女の話をするともっともっと嫌い。
 良樹が魔女を恋人にするともっともっともっともっと嫌い
 良樹が魔女にキスをするともっともっともっともっともっともっと嫌い
 良樹が魔女に何かするだけで、何かしてあげるだけでもっともっともっともっともっともっともっと嫌い!

 そしてその世界に私が存在していることが、ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっと嫌い!
 頼むから良樹! 魔女を関わらせないで!
 あなたの世界から完全に魔女を消滅させて!
 でないと、あなたのことを私はどんどん嫌ってしまう!!

 良樹を嫌いになんてなりたくない!
 良樹良樹良樹良樹よしきよしきよしきよしきよしきよしきききききききききききききききききききききききぃきぃきぃきぃきぃいいいいい!!

りぃんりぃんりぃんりぃんりぃんりぃん

 ……。
「……なにやってんの……私……」
 意識がようやく覚醒し始める。
 気が付けば、20分間。何も言わずに床を殴っていた。
「……最悪」
 血だらけの拳に、マットに広がる血の跡、そこに散乱する自分の髪の毛。
 とても自分でやったとは思えない。何度壁を叩いてたんだ? 
 玄関マットをめくってみる。
「げっ」
 床がめっちゃヘコんでいた。
 ボコりっという擬音が似合いそうなほど、フローリングの木にひびが入っていて体重をかけるとそのまま足がズボリと沈んで突き破りそうだ。
 マットを元に戻す。早百合は見なかったことにした。
 早百合は立ち上がると、とりあえず血で汚れた玄関マットを仕舞い靴箱の棚の奥から使われていなかったクモのプーさんの玄関マットを取り出す。それをひびが入った床を隠すように置いた。
 一番踏んじゃいけないところに足で踏む玄関マットを置いてしまってるが、その時はその時だ。ズボリといったらシロアリのせいにすればいい。築4年だけど。
「ふぅ……」
 それにしても…。ここ最近の自分は酷い。
 感情が高ぶりすぎて、床を殴ったりするなんて初めてのことだ。
 原因は……。
 しずるへの嫉妬……。
 嫉妬のはず……。
 しかし、なにかがおかしい。
「……私、嫉妬してるんだよね? しずるさんに……」
 そうだ。良樹が欲しくてたまらない。
 魔女が邪魔で憎くてしょうがない。
「嫉妬……」
 しずるの顔が頭に浮かぶ。
 頭の中に浮かんだしずるの表情は何故か笑顔だった。一緒にプリクラを撮った後、二人で話していたときの笑顔。
 自分と友達になってくれと言って手を出してくれた時の笑顔。頬のえくぼまではっきりと浮かぶ。
 良樹を奪ったしずるが憎い憎い憎い憎い……。
 憎いはずなのに。頭の中に浮かぶしずるは爽やかで、微笑ましくて、とても綺麗。

 だめだ。自分がわからない。
 この嫉妬は間違いに決まっている。
 でなければ、こんなときに、本心晒してくれた時の爽やかな顔をした綺麗なしずるの姿を頭に思い描けるものか。

 自分のことの筈だ。
 これは自分の感情の筈だ。
 こうやっていま立っている足も、血だらけだった手も、くしゃくしゃになった髪の毛も、目も、鼻も、口も、この感情も、心も、なにもかも。全て私のものの筈だ。

 しかし、それが揺らぎ始めている。
 自分の意志とは違うところに、何か違う自分が居る。
それは本物である自分の意思を食い始めている。

 早百合は寒気を感じ、自分の体を抱きしめた。この寒気は風邪なんかではない。しかし、がたがたと震え始める自分の体。
 浮かんでは消える、思考。

 自分は良樹を独占したいのか?
自分は魔女を憎んでいるのか?
自分は嫉妬に狂った女なのか?
本当に自分は良樹が欲しくてたまらないくて、魔女を殺したいほど憎む嫉妬心を持っているのか?

 早百合が握り締めた携帯電話の鈴は今は鳴っていない。
(続く)

スポンサーサイト
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)
http://debumoja.blog90.fc2.com/tb.php/15-f812bf6b

0件のトラックバック

0件のコメント

コメントの投稿

投稿フォーム
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。