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『疾走』 第十九話 B ◆/wR0eG5/sc

「ぁ、あの、実は俺、今日、放課後ちょっと外せない用事があって」
「え……っ? あ、そうなんだ」
 俺独りだけでお見舞いだと……冗談じゃない。
 いかにも困ったように髪をかきながら、どんどん嘘を吐き出す。
「なのですいませんけど、生方先輩が届けてくれませんか」
「まあ、わたしはいいんだけど、いたりが残念がると思うなあ。どうしても外せないんだよね」
 確認された。
 やっといたり先輩が俺から離れてくれているのだ。
 心配でもここは無視する。俺は正しいのだ。
 そのはず、なんだよ。
 そりゃ怖いからとか、そんな理由もたぶんに含まれてるんだけど……。
「はい」
 俺は断言する。
 生方先輩は、「ふぅ……ん」と、左右に結った髪を交互に撫でながら呟く。
 まっすぐ、視線が俺をいぬく。
「だったらしょうがないね。うん、わかった。今回はわたしに任せたまえっ」
「は、はいっ。お願いします」
 苦笑で頭を下げた。
 ああ。
 言えない、言えないけど……はやく、言わないと。
 でもなんかめんどくさいなあ。
(――ぁっ)
 ……めんどくさいっ?
 そんな思考に陥った自分が嫌だった。
 初見から、なにかおかしいとは頭の片隅で考えていた。
 放課後。ノートを手に。
 生方はエレベーターの中で、上昇していく数字をぼんやり眺めながら考える。


 俺が、いたり先輩の彼氏って……だ、誰が、そんなこと言ったんですか……っ?


 この台詞は変だ。
 あのときの瑛丞の表情も同時に思い出しながら、改めてそう判断する。
(あきらかに動揺してたもんねえ……エースケくん、さ)
 あのとき、もっと突っ込んで訊くべきだったのか。
(いや……ぃやいや、ああもう、よそう、なんかこういうの、考えるの嫌だと、いうか……)
 数字は五階を示している。もう少し。
 また数字を眺めながら、ぼんやりとまた考える。
(ああっ……でもエースケくんはアレだな、性格は優柔不断って感じだけど、笑うとすげえ可愛いよねぇ)
 笑わなくてもそうだが。
 決して彼の顔は男らしいそれではなく、むしろその逆で。
 かなり華奢だし、背丈もそれほど……生方と同じくらいであるから、男としては低いのではっ……?
 女装とかできそうっ?
 生方のあの言葉は、決して冗談などではない。
(でもだめだ、だめ、もういたりがとっちゃったんだから、うん)
 左右に結った髪がふりふり揺れる。
(けど、おしいなあ、ああっ)
 想像する。
 彼の泣きそうな顔を……っ。
 ぞくり。
 いじめたい。すげえいじめたい。彼のよわみを握ってそれを材料に罵倒したい。
 泣き出した彼の顔はきっと可愛い。それをみおろす。そして彼はいう。
『ご、ごめんなさい、ごめんなさいっ。許して下さい、生方先輩……っ』
 う、うひゃあっ!
 いいなあっ……。
 ついでに女装させて一緒に無理矢理外出したり。うへっ。
「やば、よだれ出そうっ」
 というか出ていた……自分の悪癖に、生方は「はあっ」と吐息。
 わたしという女は、どうにも趣味が悪いというか、何というか……っ。
 数字は、八階。
「はあっ……さっさと渡して帰るかねえ」
 ホールに出て、廊下に。
 瀬口の表札を見つける。迷わずチャイムをならす。
 ピンポン。
 ……出ない。
「ぁ、れ」
 連打する。しかし出ない。
 だがいたりは病気で学校を休んでいるのだ……なら家にいるはずだ。
「ええっ……? あれえ、おかしいなあ」
 その後数分、生方はチャイムを連打したのだが。
 瀬口至理は結局そのチャイムには応じなかった。


 もしくは、自分の家に、いなかったのだ。

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