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白き牙 ◆tVzTTTyvm.

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「遅いね、リオにいさん」
「そうね。 説得に手間取ってるのかもね。 大丈夫かな……」
 今私達はリオの村に帰ってきてて、そしてリオの家でクリスと二人お留守番中。
 リオはと言うとコレットの家に行ってる。
 そう、私と付き合う事にした事。
 そしてそれによりコレットと交わしていた婚約の破棄を申し出る為に。

「そんなに気になるなら姉さんも一緒に行けばよかったのに」
「うん、確かにね。 私も最初は一緒にいけばよかったかなって思ってた。 けどね……」
 実際私は最初其のつもりだった。 だがリオが一人で行くといったのだ。
 結局私のことを明かさねばならないことには変わりないのだが、最初から其の事を明かすと
私の"勇者"と言う肩書きを言い訳にするみたいでイヤだと言ったのだ。
 何よりリオの其の言葉が私を"勇者"ではなく一人の女としてみてくれてる証だったから。
 それが嬉しかったから。
 だから――。
「リオが決めた事だから。 だから私は其の意見を尊重することにしたの」
 そう言って私はクリスに向かって微笑みかけた。
 私が微笑みかけるとクリスも応えるように微笑を返してくれた。


 その時私達の耳に扉を開く音が届いた。
「リオ?」
 私達は其の音に反応し扉の方を見た。 だがそこにいたのは――。
「お久しぶりね。 セツナ」
 そこに立っていたのはコレットだった。

(え? な、何でコレットがココに?)
 コレットの予期せぬ来訪に私は戸惑いの色を隠せず固まってしまった。
 開け放たれた扉の前に立つコレットは其の顔に満面の笑みを浮かべてた。
 村の中で両親に大切にされのびのびと育てられてたことを感じさせる笑顔。
 今まで幾度と無く見てきた、いや見せ付けられてきた笑顔。
 だが、今目の前にある笑顔はどこかいつもと違う違和感を感じさせる異質なもの。
 いや、異質と言うよりはどこか歪な、まるで精巧にそっくりに作られた仮面のような
そんな奇妙な感じを抱かせる笑顔。
 其の異質な笑顔に私が言葉を発せらずに、いや、呑まれていたのだろうか。

 その時傍らでがたりと椅子が動く音。
 見ればクリスが凄まじい形相でコレットを睨みつけていた。
「(クリス……!)」
 私がクリスの肩に手をやりそっと耳打ちすると、クリスは「ゴメン、大丈夫だよ」と
そう言ってそして視線をコレットからそらした。

「もう~、セツナってば最近全然うちに来てくれないんだから」
 コレットはクリスのことが眼中に無いように引き続き私に語りかけてきた。
「あ、うん……。 最近冒険もキツくなってきて、チョット疲れとかも溜まって……」
 私は戸惑いを隠せず答えるがコレットはそんな私の言葉に気にせずいった風に喋り続ける。
「それよりね、今日は大事な事を伝えにきたの。 あなたにリオからの伝言よ
『ごめんなさい』ですって」
「え……?」
「まぁ何て言うの? リオったら若気の至りみたいな感じで告白しちゃったのね」

 若気の……至り?
 違う。 リオは決してそんな短絡的な行動をとるような浅い人間なんかじゃない。
 私は反論の言葉を紡ごうとする。
 しかしそんな私の発言を妨げるようにコレットは言葉を続ける。
「村に帰ってきて私の顔を見て目が覚めたみたい。
気心の知れた幼馴染の私の方が良かったって事なのね。
そりゃそうよね。 何て言ったって刻んできた年月の長さが違うもの」
 コレットの言葉に言い返そうとした私は思わず言葉に詰まってしまった。
 刻んできた年月の長さ。 積み上げてきた思い出の深さ――。
 私がどう足掻いても敵わない――時間の壁。
「だからね、そう言う訳だからリオに代わって私が伝えに――」
「出鱈目抜かすなぁ!!」
 そう怒鳴り声を上げたのはクリスだった。
 言葉を遮るように叫んだクリスはそのままコレットの胸倉を掴み壁に叩きつけてた。

「クリス?! ちょ、落ち着きなさいクリス――」
「さっきから黙って聞いてりゃ勝手な事ばっか抜かしやがってこのアマァ!!
リオにいさんが……リオにいさんが姉さんじゃなく貴様を選んだだとぉ?!
そんな……そんな訳あるかァ!!」
「く……苦し……」
 クリスはコレットの胸倉を掴んだままそのまま締め上げていた。
「落ち着きなさいクリス! とりあえず手を離しなさい!」
 話し掛けるもクリスは私の声が聞こえないかのように尚もコレットを締め上げていた。
「いい加減な事言ってんじゃねぇぞ! 殺されたいか、あぁ?!
だったらこの場でブッ殺してやるっっ!!」
「クリスッッ!!」

 ヤバイ。 このコのコレットに対し積もり積もって長年溜め込んできた量は尋常じゃない。
 このまま放っといたら感情のまま確実に絞め殺して、或いは首をへし折ってしまいそう。
 クリスの豪力の前ではコレットの細首をへし折る事なんて花を摘むより容易い――。
 いけない。 そりゃ確かに私もコレットは嫌いだし気持ちは分かるが、
でも私の力じゃこのコは止められ……止めさせなきゃ駄目だ! 何があっても。
 でもどうやっ……!
 私はクリスの頭を両手でがっしと掴むとすかさず自分の唇をクリスの唇に重ねた。
 睫毛の数まで数えられそうなほど間近に迫ったクリスの瞳に驚きの色が浮かぶ。
 そして其の拍子に手から僅かに力が抜けるのを見計らいその手からコレットを引き剥がす。
 開放されたコレットの体がドサリと床に崩れ落ち、断たれてた空気を取り込もうとする様に
激しく咽び咳き込む。

「ね、姉さん!! 何でこんな女助け――」
 思わず顔を真っ赤にし食って掛かりそうなクリスの耳元にそっと囁く。
「(コレットが嫌いなのは解かるわ。 でもね殺したら駄目。
そんなことしたらリオに顔向けできなくなるわよ?)」
 そう。 仮にもこの女はリオにとっては家族も同然の幼馴染。
 そんな人間を殺してしまっては幾ら大切な仲間で妹分とは言え――。

 私が言わんとした事を察したクリスは動きを止めバツが悪そうに黙り込む。
 そして私はそんなクリスを抱きしめ背中を優しくそっと叩きなだめる。
 私が目配せするとクリスは頷いて私から離れた。

 私は咳き込むコレットに目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「ゴメンね。 手荒な真似しちゃって。 後で言っとくから許してあげて。
それよりさっきの話もう一度詳しく話してくれる?」
「ゲホッ……、ゴホッ……。 い、良いわよ。 な、何度でも言ってあげるわよ。
リ、リオはね……。 あなたじゃなくて幼馴染で気心の知れた私を――」

「嘘」

 私は遮るように只一言、すっぱりと言い放った。
 そう言い放ったその時の私の気持は驚くほど落ち着いていた。
 そしてその声には頑なな否定も、非難も、そう言った感情も、そして迷いも全く無い、
自分でも信じられないほど抑揚の無い落ち着き払った声だった。
 さっきのクリスのキレた行動が私の気持を落ち着かせ鎮めてくれたのかも。
 そしてそのことが私の中のリオへの気持を、信頼を想い起こさしてくれたのかも。
 そう、誰に何といわれようと胸を張って言える。
 私のリオへの想い、そしてリオが私へ向けてくれる想いは紛れもない本物だと。
 誰が何と言おうと揺るがず信じられる想いだと。

「な……?! 何言ってるの?! わ、私の言ってることが信じられないって言うの?!
だ、誰よりもリオと長い時間を過ごしてきた私の言う事が!!」
 そう言ったコレットの口ぶりは先ほどまで私に対峙してた時の落ち着いた様子は微塵も無い。
「そうね。 確かに過ごしてきた時の長さじゃあなたには敵わないわ。
そんなあなただからこそ分かってるんじゃない?
自分の言ってることが嘘だって」
「だ、だから嘘なんかじゃ……!」
「過ごした時間の長さじゃ敵わなくっても過ごした密度と思いの深さじゃ負けないつもりよ。
そんな私だからわかるの。
リオは責任から逃れたり、そのために他人に任せたりなんかする人間じゃないって」
「う、五月蝿い!! ひ、ひとから婚約者を奪った泥棒猫がリオを語らないでよ!」
「奪った……か。 否定はしないわ。 でも裏を返せばそれはあなたが
"奪われた"と認めたって事よね?」
 次の瞬間乾いた音と主に私の頬に痛みが疾った。
 目の前のコレットは腕を降りぬいた姿で怒りで滲んだ瞳で私を睨みつけていた。
 そんなコレットにクリスは思わず掴みかかろうとするのを私は手で制した。
 ――痛い。 けど不思議と不快感はあまりない。
 モンスターとの戦闘で受けるダメージに比べればこんなの撫でられたようなもの
と言うのもあるが――。

 私は頬をさすりながらコレットを見据え口を開く。
「今の平手打ち、つまりは認めたって受け止めていい訳ね?」
「う、うあぁぁぁっ……!! か、返してよ!! リオを!! 私のリオを返し……
むぐっ?!」
「クリス!」
 激昂して私に掴みかかろうとするコレットの間にクリスが割り込むように入り込み、
コレットの口を塞ぐように顔面を掴んでいた。
「クリス! 落ち着きなさ――」
「大丈夫、落ち着いてるよ、姉さん。 このままこの女の顔面を握り潰したりしないから」
 クリスは怒りを押さえ込んでる――そんな笑顔を私に向け、
そして無造作に手を開くとコレットの体がどさっと崩れ落ちる。
「……っ! さ、さっきから一体何なのよアンタ?!」
「……フン。 やっぱり憶えてないみたいだな。 まぁいい。 
それよりさっきから聞いてりゃ随分嘗めた事ばっか抜かしてくれたものだな、あぁ?!」
 クリスがそう言って凄むとコレットは「ひいっ」と小さく悲鳴をあげる。
 先ほどまでのが堪えてるのだろうか。
 クリスはそんなコレットに冷ややかな視線で見下ろし、やがて私のもとに戻ってきた。

 そしてコレットは暫らくうなだれているとやがて肩を震わせる。
 だがコレットの口から漏れてきた声は嗚咽ではなく。
「フフ……、アハ、アハハ……。 そ、それで勝ったつもり……?」
 其の口から漏れてきたのは狂気染みた笑い、声?
「そうよ。 確かに私はあなたに奪われたわよ。 でも奪われっぱなしじゃないわよ?」
「どう言う……意味?」
「貴様! リオにいさんに何かしやがったのか?!」
 私は其の笑顔に気圧されるように声を発し、クリスは怒気を孕んだ声を上げた。
 コレットはそんな私達に向かい挑発的な、そして狂気染みた笑顔を向ける。
「ふふ……。 さあぁねぇ? でも、教えてあ~げない。 くすくす……」
「な、何? コ、コレット、あんたリオに一体何を……」
 私は口から漏れる声に狼狽の色を隠せなかった。
 そして狼狽する私の顔を見つめながらコレットは嘲けるように口の端を持ち上げる。

 そんなコレットに向かいクリスは再び胸倉をつかみ壁に叩きつけた。
「姉さん、今度は止めないでよ? 大丈夫殺したりはしないから」
 そう言うとクリスはコレットの体を投げ捨てるように床に叩きつけた。
 そして継いで口を開く
「おい、リオにいさんをどうした」
 コレットは一度クリスを睨みつけ、そして顔ごと視線をそらした。
「素直に吐くつもりは無いようだな。 だったら……」
「ちょ、ちょっとクリス。 一体どうするつも――」
「喋る気になるまでこの女の指を一本づつ折ります」
「!!」
 その声にコレットの顔が引きつる。 クリスの声に含まれた"本気"を感じ取ったのだろうか。
 クリスの手がコレットの手に向かって伸びる。
 即座にコレットは其の手を引っ込めようとするが、それより早くクリスの手が掴んだ。
「や、やだ! ちょっ、は、離しなさいよ!」
 叫ぶコレットの顔には恐怖の色がにじみ出ている。
「ああ、素直にリオにいさんの事喋れば離してやるよ。 リオにいさんをどうした?」
 そう訊きながらクリスは手に力を込めようと――。
「待ってください……!」
 その時クリスの行動を制するように響いた声。
「リオ!」
 声のした方を見ればリオが扉に身を預けるように立っていた。
 私はリオに向かって駆け付けた。
 そして頭に包帯を巻いた其の姿に思わず声を上げ体を支えた。
「ど、どうしたのよその怪我?!」

「そんな。 しっかり縛っておいたのに……」
 そう声を洩らしたのはコレット。 目をやればしまったと言う風に口元に手を当てる。
 そしてコレットの手を捕まえていたクリスの貌にはより一層の敵意が深まり
今にも其の手を握り潰しそうな。
「待ってくださいクリス! 私なら大丈夫ですから。 だから……」
 リオの声が届いたのかクリスは険しさを残した表情も、掴んだ手もそのまま動きを止めた。
 そしてリオは言葉を続ける。
「コレットを責めないで下さい……。 悪いのは、全て私なんです……」
 え……? 其の言葉に私の胸はざわつく。
<悪いのは、全て私なんです……>
 い、一体リオはどんなつもりでそんな事……。

「私が……、安易な気持で婚約など受けなければ……。そうすればコレットを傷つけたり……」
 私は其の言葉に胸をなでおろした。 一瞬リオが私を選んだ事を後悔して
あんなこと言ったのかもと思ってしまったから。
 そして恥じた。 一瞬でもリオを信じられなかった自分を。

「リオ! 違うでしょ! 間違いは私との婚約じゃなく一時の感情で其の泥棒猫に誑かさ……
痛っ……!」
 叫びかけたコレットは痛みの声をあげた。
「クリス……! 手荒な真似は――」
 リオの声に振り向いたクリスの其の顔からは先ほどまでの険しさは消え平静さを戻していた。
「大丈夫、落ち着いてるよ。 ごめんねリオにいさんの"幼馴染"に手荒な真似しちゃって。
じゃぁボクはこの女……コレットを送り届けてくるね」
「ちょっ! わ、私とリオの話は未だ済んでな……ひっ!」
 そしてクリスはコレットを睨み付け引き摺る様に連れ出し家の外へ出て行った。
 心配が無かった訳ではないが出て行くとき私が「手荒な真似しちゃ駄目よ」と目配せすると
笑って応えてくれたので大丈夫だろう。

 コレットがその抵抗も空しくクリスに引き摺られる様に出て行くと
部屋には私とリオだけになるとリオは縋りつくように私に抱きついた。
「リオ……?」
 二人きりになった部屋の中私の耳に聞こえてきたのはリオのすすり泣く声だった。
 私の頭の中を色んな思いが駆け巡る。
 私を選んでくれた事への嬉しさ。
 私を選んだ事で辛い思いさせてしまった事への申し訳なさ。
 でも……、今はあえて何も言わなかった。 言うべきでないと思えた。
 だから――。

 私は黙ってリオの体をそっと抱き締めた。

To be continued...
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