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魔女の逆襲第7話 ◆oEsZ2QR/bg

 茶室に入り、座布団を渡された早百合は茶室という厳格な雰囲気からか、正座をして座布団に座る。
対するしずるはまるで自分の家のようにリラックスして座布団の上であぐらをかくと、茶釜から注いだコーヒーを一口飲んだ。
「自分の部屋だと思ってくつろぎたまえ」
「は、はい」
 楽にしたまえと言うが、ここはしずるの部屋でもないだろ。単にしずるが勝手に使っているだけだ。
 出されたコーヒーを一口飲む。熱くて少ししか飲めない。独特の苦味が口の中を漂った。コーヒーは飲めなくは無い。ただ早百合は紅茶の方が好きだった。
 ふぅと一息つく。
対面しているしずるはあぐらのまま茶碗を口元で傾けていた。のどがこくこくと動いている。
あれだけ熱いコーヒーを一気飲みするとは、しずるの喉はもしかしたら瞬間冷却装置でも内蔵されているのかもしれない。
 やがて、全てを飲みきったしずるは恍惚そうな笑みを浮かべると、空になった茶碗を置く。
「あぁ、そうだ。君に報告したいことがあったんだ」
「なんですか?」
 魔女はくちびるをつんと尖らし、微笑んだ。
「昨日良樹とちゅーをしたぞ」
「え?」
「ちゅー、きっすだな」
 早百合は呆然となった。キス? 魔女が? 良樹と?
「なんだね。その想像付かないというような顔は」
 しずるが少し不機嫌そうに眉を寄せた。口元はいつものにやけた微笑のままだ。

 刹那、早百合の胸に弓矢で射抜かれたような痛みが走る。さらに、早百合の心の中が泡立つように揺れる。
昼間に見た良樹との昔の夢が小骨のように心にひっかかって、妙な不快感が早百合の心に訪れた。
 しずるに対する不快感…?
 早百合は自分の心に突然現れた不快感に驚く。
 なぜ、自分は不快感を感じているのだろうか? 目の前にいるのはしずるという良樹の恋人だ。恋人同士がキスすることなんて普通のことだ。普通のことのはずだ。
 …それが幼馴染としか良樹と接することができなかった私の遥か上空を飛びさって、良樹を手中に収めた魔女だとしても。


りぃ…ん 


なに考えてるのだ。自分は。
これではまるで良樹の唇を奪ったしずるに嫉妬する雌犬だ。
早百合は自分の心に現れた何かを精神で打ち消した。携帯電話の鈴がなったような気がしたが、気のせいだろう。
「そうですか」
 早百合は努めて冷静な声を出したつもりだった。すこし声がうわずっていたような気がして慌ててしずるの顔を確認するが。
「そうだよ。良樹との初ちゅーとレモン味はしなかったぞ。むしろ良樹と一緒に食べたのど飴のミントの味がしたな。どちらにしても甘酸っぱい味だった」
 魔女は早百合の内面には気付かなかったようだ。
「どうして私に報告を?」
「ふふん。いやな。はぢめての恋人との大きな一歩を誰かに報告したくてたまらなかった。いやぁ、キッスだぞ? さくらんぼキッス。鼓動の波打つ早さは急上昇だ。たぶん200は振り切ったな、あの時は……うへへ」
 あぐらをかいたしずるは、良樹とのキスをもう一度想像したからか、ほんのり桜色になった頬をいやいやんと押さえた。噂の魔女とは思えないほどの純情っぷりに早百合は呆れてしまう。
 恋人のことを考えて赤面する姿は、まるで中学生のようだ。数年前まで早百合もしずるも中学生だったけども。
「あのキスを受けてからは私の中での良樹の好感度はこいのぼりだよ」
「こいのぼりじゃなくてうなぎのぼりですよ?」
 魔女はからからとひとしきり笑った後、一拍置いて早百合に微笑んだ。
 早百合はコーヒーをもう一口含んだ。苦味がもう一度口に広がる。
「まぁ、それはいいとしてだ。物は相談なのだが」
「相談?」
 この流れからして、良樹がらみの相談だろう。幼馴染である早百合に良樹について知りたいことがあるのか。
 恋愛についての質問ならできれば遠慮したいところだった。恋愛なんてマンガや映画やドラマの世界でしか見たこと無い。
 これでも早百合は彼氏いない歴17年だ。いまだに告白経験はゼロ。恋愛に関してはしずるの方が一歩二歩も先だ。相談されても困るのだが…。
「良樹のことだよ」
「それなら本人に聞いたほうがいいんじゃないんですか?」
 早百合は思わずトゲついた言い方をしてしまう。先ほどの心の泡立ちが再発しそうだった。
「いやいやいや、良樹にはすこし聞きづらいことなのでな。だから君に聞こうとしてるのだよ」
「はぁ…」
「君は良樹のことについてなんでも知っているだろう?」


 はい、
 良樹のことなら趣味や生年月日、好きな食べ物、嫌いな食べ物とか…なんでも知っていますよ。
 そう早百合は言おうとして…。
(あれ…?)
早百合はひとつの事実に気付く。それは理解者と自認していた自分に衝撃を与える事実だ。
(…私が知っていることは、良樹の中学生のことまでだ)


 きっかけは目の前にいる魔女。
 そういえば、どうして良樹は魔女と付き合うことにしたのだろう?
良樹は魔女の一目惚れという言葉にどう思ったんだろう?
 良樹は魔女をどれくらい理解しているのだろう。


 …どうやって二人は好きあってるのだろう?


 りぃん
 鈴が鳴る。
 早百合はなにか変な方向に行きそうな自分の思考を戻す。が、頭の中の思考の電車はどんどん違う方向へ進路を変えてゆく。
 おかしい。
最近は妙に良樹と魔女の二人のことについて考えている気がする。二人のことを考えただけでどんどん胸が苦しくなって、自分が二人とは比べ物にならないほどちっぽけな存在かもしれないという考えが頭を支配していってしまう。
なんだろう? なんだろうこの気持ちは。
魔女と初めて出会って、良樹と魔女の二人のやり取りを見ていた私はこんなに卑屈ではなかったハズだ。
二人のことを近くに感じながら、お似合いだと思っていたハズだ。魔女の純粋な気持ちを知って、彼女に良樹を任せようと決心したハズだ。
二人の並んで歩く姿に微笑ましさを感じたハズだ。なのにどうして、なのにどうして、今はこんなに。
感情が震えて爆発しそうなほど、自分は疎外感を感じているのだろう?
 泣きながら良樹に引っ張られ、一緒に謝りにいったあの夢がまた鮮明に思い出されてゆく……。


『よしきくん…』
『なぁに? さゆりちゃん』
『ありがとう。一緒に謝ってくれて…』
『いいんだよ。べつに、ともだちでしょ?』
『…うん。本当にありがとう。よしきくん』
『えへへ…』


『ねぇ、よしきくん。すき、大好き………』


りぃぃん


「鞠田早百合? どうした?」
 気付くと、早百合は一人で涙を流していた。
 あれ? 私はいったいどうしてたんだろう?
 眼前にはしずるの心配そうな顔があった。あぐらを崩しひざ立ちでこちらの顔を覗き込んでいる。
「…あ…あれ?」
「突然泣き出してどうしたのだ? もしかしてコーヒーが嫌いだったのか?」
 自分の涙に驚いて、早百合は呆然とする。
「い…いえ。違います…コーヒーではないです…」
「………」
 しずるはさらに眼前に近づくと、いきなり早百合の鼻をぺろりと舐めた。
「ひゃっ!」
 突然の湿りに早百合の体がぶるりと震える。
「しょっぱいな。涙か」
「な…なにするんですかっ。いきなり…」
「君は今、感情がゆらいでいるよ」
 魔女の瞳が鴉色に光る。しずるの瞳と早百合の瞳がぶつかりそうなほど近づく。
「なにか、君に異変がおきはじめている。心の中の君が暴れている」
 急速に早百合の心に魔女の言葉が突き刺さった。
早百合ははじめて魔女に畏怖の念を抱いた。魔女の瞳は早百合の心の中をスキャンするように光を突き刺し、体や心が裸にされていくような感覚を
「なにかあったのか? 私でよければ相談に乗るぞ? どうだ、お金は取らないから話してみては?」
 ただ、話すわけには行かない。話したくない。


 それを話してしまうと…。
どうなる?
「話してくれないか? われわれはつながりをもった友人だろう?」
たぶん、しずると良樹の関係が崩れてしまうかもしれない。
ダメだ。それはダメだ。早百合と良樹としずる、月で拾った卵で誓った友情は、壊してはいけない。決して壊すことの許されないつながりだ。
心の中で、早百合は強く感じた。
しずるが、孤独な魔女がはじめて作ったつながりを、私が壊すわけにはいかない。
「い…いいえ、…大丈夫です……」
 早百合は涙を抑えて静かに呟いた。
 涙を手で拭こうとして…、しずるが黒いハンドタオルを早百合に手渡した。
「これで拭きたまえ」
 早百合はありがたく受け取ると、それでごしごしと涙をふき取った。ただ、いまだ感情が抑えつかない早百合は目元に黒いハンドタオルを抑え顔を塞いでしまう。
 そのまま十数秒。茶室の中を沈黙が支配した。
 外から聞こえるのは野球部の掛け声。


 最初に口を開いたのはしずるだった。
「…今日は相談できる雰囲気ではないな…」
「す…すいません」
「いや、いい。私はこのまま消えよう。なにかあったらまたここに来てくれ。いつか君が私に相談くれることを切に願ってるよ」
「はい…」
 しずるの残念そうな声が届く。どんな顔をしているのか。顔を塞いだ早百合からは見えない。
 突然泣き出した自分に怒っているのであろうか。自分に相談をしてくれなかった早百合に失望しているのか。
 ただ、早百合にはひとつ確信はあった。しずるはこんなことでつながりを断ち切る人ではないということは。しずるはクールで変で魔女だが、とても友人想いだ。
 しずるが立ち上がる音がする。空気が震える様子で早百合にはわかった。自分の横を通り過ぎてしずるは茶道室のドアを開けた。ガチャリという音。
「しずるさん?」
「また会おう。鞠田早百合。あ、そのブルマはいつか返してくれ」
 冷たい空気がドアから流れる。早百合はハンドタオルから顔をあげて、振り向くがすでに戸が閉まりしずるの姿は消えていた。茶室に残っているのは冷たくなった風とコーヒーのにおい。
 そして、涙を拭いた早百合。
 しずるは冷静でオトナだ。話をできなかった私に配慮して一人にしてくれた。
 涙を拭いて、一人落ち着く。と、
「ブルマ?」
 早百合はしずるの最後の言葉に引っかかる。ブルマとはなんのことだ?
 もう一度、顔を拭こうとして…。手にしていたものを見て、早百合は絶句した。
 早百合がハンドタオルだと思って顔をうずめていたのはしずるの紺ブルマだった。
 しかも明らかに今脱いだものである。 …何を考えているのだ。魔女は。もっと他に渡すものがあったろうがっ。
 一気に脱力する。
 自分は脱ぎ立てブルマに顔をうずめて泣いていたのか。傍から見れば明らかに変態である。
しずるのブルマは芳醇な香りを漂わせ同姓だけど思わずラッキーとしか……って、違う。自分はレズでもないし、ブルセラ趣味なんぞ持っていない!
「…なんなのよ…、もう…」
 早百合は茶道室で大の字に倒れた。自分に生まれたおかしな感情としずるの行動に、早百合の精神は大きく疲労したのであった。


現在午後4時半。いまだ外では野球部の掛け声が聞こえてくるし、吹奏楽部の合奏の音も響いている。
 ふと、ここで早百合はあることに気付く。しずるの脱いだブルマがここにあるということは。
ヤツは体操服にぱんつ一丁で外へ出て行った。
いまだ人が残る校舎で、体操服にぱんつ一丁…。
「…………魔女だ…」
 ブルマを手に、早百合はひとり呟いた。
(続く)

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