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水澄の蒼い空 第16話『勝敗』◆mxSuEoo52c

 第16話『勝敗』


 ふはっはははっはははっっはははっははははは。
 笑いを堪えるのがこんなに辛いと思ってもみなかった。
 
 計画通り!!

 嫉妬に狂った虹葉姉と紗桜がどういった手段で鷺森家に仕掛けてくるのは大体読めていた。
宅配ピザに毒物を仕掛けて俺と音羽が二人とも食べてしまい、食中毒を引き起こすのが二人の本来の策だったんだろうが。
俺はすでにその怪しい宅配ピザの従業員が紗桜か虹葉姉だとすでに見抜いていた。
シスター役の虹葉姉が宗教勧誘を装い、救急車を呼んで病室で過剰な看病で俺を病室に閉じ込めようとする。
いや、天草月を監禁して外部との接触を遮断することがことが目的なのだろう。

 それが虹葉姉と紗桜の策。

 異常な家族愛が求めるのは束縛されて依存だけの生活。
そこには、二人以外の異性の存在は許さず、ただ激しい独占欲で俺の存在を檻のように閉じ込めてしまう。

 これは聖戦。
 天草月と水澄虹葉や水澄紗桜による自由と束縛を懸けた戦いなのだ。
 きっかけはエロ本に過ぎなかったが。
 三人が抑え切った抑圧が一気に噴射したのだ。

家族であることに疲れ、単純に男と女の依存関係の枠に収まることを本能的に行動している。
ゆえに俺はそこから抜け出して自由の一歩を踏み出す必要があった。
 姉妹に対する気持ちが愛や恋という感情が芽生えているかどうかがわからない。
 ただ、これは俺の我侭。
 今まで築いてきた家族の再確認。俺は彼女たちに恋をしているのか?
 それが知りたい。

 ただ、虹葉姉と紗桜に勝利しないと待っているのは永遠に堕落した生活が待っているのだ。
今までの惰性した生活を送る。
それはもう嫌だ。

 本来の策が失敗した以上、姉妹は俺が鷺森家に同居している証拠を音羽や俺に突き付けるだけで確実に勝利する。
だから、二週間以上じっくりと時間をかけてコスプレ衣裳を仕上げて来たのだろう。
その姿で俺が思わずツッコミを入れてしまうことを期待して。
 更に呆れた音羽の隙を突いて、無理矢理不法侵入して俺がこの家にいる痕跡と証拠さえ掴んでしまえば、
姉妹特権で俺をおしおきする権利が与えられる。家に帰れば、その題目で思う存分に操られるだろう。
 だが、甘い。

 まさか、俺が直接自分自身に細工を仕掛けるなんて虹葉姉と紗桜も予想していなかっただろう。
 虹葉姉と紗桜がコスプレ衣裳を身に纏うことはすでに予想していた。
俺は姉妹の俺に対する依存心を把握し挑発的な態度を取ることで思う存分に煽った。
自分が音羽に洗脳されて監禁されている。絶対に助けなくてはという彼女たちの都合の良い被害者像が作られる。
その焦燥に駆られた感情が法に触れようが俺のためになら、どんなことをしてもいいという結論に導かれる。
 ゆえに音羽の隙を付くためにあの演出と衣裳は必要不可欠であるが、ここにイレギュラーが潜んでいたらどうなるか? 
姉妹たちが予想していなかった第三者の登場。
 それは、鷺森家に暮らしていた第三者の存在が天草月の存在を全て覆ってくれる。

 それが鷺森月花の存在である。

 昨日、俺が音羽に買物を頼んだのは女性用の洋服と下着であった。
 後はかつらや脱毛パックや乳液や美肌クリームや化粧道具etc。

 つまり、俺は鷺森音羽の妹、架空の人物である鷺森月花を演じることによって、
天草月が鷺森家に同居している痕跡と証拠を全て消し去っている。
すでに本来の俺の痕跡はできる限り隠滅し、姉妹の目の前にいるのは俺が演じている鷺森月花が暮らしていると主張すれば
姉妹は鷺森家に俺がいることを諦めるはず。

 まさか、兄と弟と慕っている男の子が女装しているとは想像すらも及びつかないだろう。
いや、可能性があるとしても真っ先に否定するはずだ。

 甘い。甘すぎる。

 花山田忠夫に遥かに劣る。

 しかし、ここに勝つチャンスがあった。
 いや、負けない方法がある。

 花山田忠夫なら相手が女装しているいないにも関わらず、女の子相手なら初対面でも胸を掴んでセクハラ行為をする。
その時点でブラジャーに仕込んでいるパッドの多さで相手が男女がはっきりと確定する。

 別に初対面でもいいじゃないか。
 相手にセクハラをかましても。

 だが、鷺森月花の存在が表舞台に出れば、俺の勝利は確定済み。
後は鷺森月花を綺麗に演じるだけで俺は勝てる。

 これで束縛された生活にさようならだ。

「音羽お姉さま、虹葉さん、紗桜さん、紅茶を持ってきました」

 長年の女の子と共同生活を送っていると自然に女の子の言葉遣いの一つや二つぐらい覚えられるさ。
テーブルに置いてあるコップに紅茶を注ぐと俺も三人同様に椅子に座った。
虹葉姉と紗桜から冷たい視線が俺に注がれているが特に問題ない。
 天草月はここにはいない。例え、気付いていたとしても証拠がなくてはただの言い争いになるだけだ。

「いい加減に家の月君を返してくれませんか? もう、二週間も家に帰ってきてないんですよ。
泥棒猫が月君を拉致して洗脳したに違いなんです」
「一体何の証拠があって言っているのか。私にはさっぱりとわかりませんよ。
月ちゃんとは昨日偶然にスーパーで出会って買物しただけですよ。
その後にちょっとだけ月ちゃんが私の家に寄っただけです。被害妄想もここまで来れば立派なヤンデレですよ」

 いいぞ。音羽。
 家主である音羽が天草月がいないとちゃんと主張すれば、黒も真っ白な事実に塗り替えることができる。
虹葉姉は悔しい顔をして唇を尖らせて拗ねていた。猫耳も怒ったように左右にピクピクと動いている。

「そもそも、どうして月ちゃんが家出しなきゃいけないんですか? あなたたちが追い出そうと工作しようとしたんじゃないの?」
「月君は……私たちにエロ本を見つけられたことで。居づらくなって家を出てしまったんですぅ!!」
「エ、エ、エロ本っっ!!」

 音羽が思わずジト目でこちらを睨んでいた。そういや、音羽がどうして水澄家に出る経緯を説明していなかった。
とはいえ、説明すると間違いなく追い出されるからな。

「そのエロ本のジャンルはほとんど姉妹恥辱だったの」
「へぇ……。姉妹恥辱ねぇ……。それは月ちゃんのとんだ変態さんですねぇ」

 声に怒気を篭もらせた音羽はさっきよりも鋭い細い瞳で睨んでいた。
会話の内容次第では虹葉姉側に寝返りするかもしれない。

「そうです。月君は変態なんです」

 少し嬉しそうに頬を赤く染めて虹葉姉は妄想に浸っていた。が、そんなことはどうでもいい。
「兄さんの趣味には困りましたね。えへへ」
 犬耳の紗桜も嬉しそうに尻尾が振っている。更に音羽の不機嫌は増すばかりだし。
もしかして、俺は追い詰められているのか?
「月ちゃんの異常な趣味はともかく。私は今妹の月花ちゃんと二人暮しなんですよ。
遠方から姉を慕って遊びにやってきたんです。あまり、妹の前でそういう会話をやめて欲しいんだけど」
「そうです。身内の方の恥話を女性が高らかに話すことではありません。
男性の方には発情期というものがあり、そういう本を読むことで性欲を発散しているのですから。悪く言うものではありませんよ」

  自分のフォローを女性を演じている月花でしているのは何か違和感を感じるのだが。これはこれで新鮮。面白っ!
  月花の説教じみた言葉に虹葉姉と紗桜の敵意がこちらに向く。彼女たちからすると俺は月を匿う敵だと認識しているだろう。
音羽が自白しない限りは俺の正体が発覚する恐れはない。
 だが、その視線が向けられる意味は俺が思っていたとは違った。

「に、兄さん? 兄さんの匂いがする」
 はい?
「そういえば、月君の匂いが月花さんからするよね」
 待て待て待て待て待て待て。そんなものはありえない。
 体臭なんかで個人を判別できるのは訓練された警察犬ぐらいしかないだろ。
「あはははっ。何を言っているのでしょうか?」
「兄さんの小さな頃から兄さんの下着の匂いを嗅いでいるんですよ。その私が大好きな兄さんの匂いを気付かないと思いますか?」
 いや、明らかにおかしいから。普通の女の子はそんな年頃から男の子の事を意識しないっての。
「つまり、あなたが月君ですね!!」
「何のことかしら?」

 行儀悪く椅子から立ち上がって俺を名指しに指を差す。
俺は優しい微笑を零しながら、内心焦っていた。音羽の協力により完璧に女装したつもりであった。
かつらを被って、女性の服を着衣し、女の子言葉で喋っていれば誰でも簡単に騙せると目論んでいた。
だが、現実はそう甘くない。
 たかだが、俺の体臭ごときで簡単に姿を見破られるとは。ありえない。絶対にありえるはずないだろうが。
だが、思う。数年以上俺の下着の匂いを嗅いできた姉妹は警察犬よりも鼻がきくじゃないのかと?
 とりあえず、落ち着け。
 ここで演じるべきなのは鷺森音羽の妹、鷺森月花だ。

「そんな匂いごときで私を天草月さんだと決め付けるのはちょっと言い掛りにも程があるんじゃないですか? 
裁判所に人の体臭を証拠として提出するには様々な化学的な分析が必要ですよ」
「でも、兄さんの匂いだもん。絶対に間違わないだもん」
 少し半泣きになって紗桜が上目遣いで俺を見つめる。うっ。胸に突き刺さる痛みは俺の良心か。
「月君」
 虹葉姉が俺の手を握って自分の胸に当てる。真剣な眼差しで俺を見つめると優しく笑って言った。
「 捕 ま え た っ !!」
 なぬっ!!
 それは一瞬の事だった。俺の手を離して虹葉姉は俺の背中に腕を抱き締めるように包んだ。
予想外のことに俺は反応が少しだけ遅れた時はもう手遅れであった。
 虹葉姉のどこにそんな力をあるかはわからないが、抱き締められた腕力はそう簡単に引き剥がすこともできずに胸に柔らかい感触が当てられる。

「あっ。ずるいっっ。私もするぅ」

 俺の背中から紗桜が抱き締めてきた。姉妹に裏表抱き締められた俺は逃げる場所なんて存在せずに二人の温もりに心が癒されていた。

「月花さんが月君なら別に証拠とか関係ないもんね。強制的に月君を連れ戻せばいいんだから。後の細かいことはどうでもいいよ」
 虹葉姉と紗桜の非常識さに呆れながらも俺自身の甘さに後悔する。
 いや、普通さ。俺が女装している事を虹葉姉と紗桜が天才的な推理で見破ったりさ。
そういう、お約束的展開がすっきりと抜けてるのはどうよ?
「にゃあ。にゃあ」
「く~ん。く~ん」

 猫と犬がすでに本来の目的を忘れて俺の肉体に甘えるように顔を寄せていた。

「つ・き・ち・ゃ・ん。これは一体どう言ったことかな?」
「俺にもわからん」

 音羽の凄まじい迫力に俺は首を傾げるぐらいしかできなかった。

 こうして、俺の家出の日々に終わりを告げた。
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